「売らない本」のチカラ ~ 世界的に有名なビジネス・コンサルタント マーク・W・シェイファーの本より
「それを作った手が好きだから」
私は16時間空腹健康法の実行者であるし、できるだけ脂肪や糖分を摂らない主義だから外食をしない。
しかし、私の息子は20代であるし、SNS世代真っ只中なので、Xやインスタに絶えず流れてくる「食べもの情報」は、彼にとって影響力の大きいものなので、彼のすすめに乗って、しばしば初めての飲食店に行くことがある。
しかし、残念ながら「1回行けばいいか!」と話しつつ帰路につくことが割合多いように思う。
そして、結局は「当りはずれ」のない、好みのチェーン店に行くことが多くなってしまう。
また、私は店舗でテーブルに座って待つ時間が「非常に勿体ない」と思う貧乏性だ。
一応、一通り携帯も眺めるが、正直言って、その時間を楽しんでいるわけではない。
そんな時に、「せっかくこの店に来たのだから、何か面白い読み物などないだろうか?」と思うことがよくある。
しかし、そんな小さな願いが叶うはずもなく、提供された料理の味やボリュームなどを吟味するという毎度のことに終始する。
そんな時、テーブルかカウンターの片すみに「そのお店のことを書いたミニブック」が置いてあり、その中に「お店の名前に込めた想い」や「お店を作ろうと思ったきっかけ」「人知れぬ苦労話」「お店をやっててよかった!と思った宝物のようなエピソード」などがかいてあったとしたらどうだろう?
「システム的に無理」
「そんな金銭的な余裕もないし、時間も無い」
・・・当然のことだろう。
しかし、少しだけ、以下に紹介するマーク・W・シェイファーの本の中の言葉を読んでみてほしい。
とっても大きな「売らない本」のチカラを想像して頂けるはずである。

『 それを作った手が好きだから
ある夏の夜、私は故郷のテネシー州ノックスヴィルの若い友人を訪ね、温かい食事と冷たい飲み物を楽しんでいた。その家の洗面所に入ったとき、私はあるものを見て驚いた。
その家には地元の小さな会社が作った石けんがたくさんあり、その石けんが、たとえばはちみつとォートミールを加えたものや、粗塩を加えてきゅうりの香りをつけたものなど、わくわくするほど種類豊富だったのだ。大麻を染み込ませた石けんまであった(私だったら語呂のいい「ドープ。ソープ(麻薬石けん)」と名付けるだろう……まあ、頼まれればの話だが)。
手作り石けんは安くないから、手当たり次第に買うわけにはいかない。
この手の石けんのなかには、アイヴォリー石けん(P&G社)の10倍の値段がするものもある。
私は興味を抱いた。決して金がありあまっているわけではないこの若い友人は、なぜ世界最大級の企業が作った有名なブランドや商品に背を向けているのだろうか?
そこで私は招いてくれた友人に尋ねた。
「アイヴォリー石けんの宣伝は、生まれたときから見ているだろう? なぜこの地元の石けんを選んだんだい? なぜアイヴォリーやダイアルやダヴじゃないんだ? “どうしてこのブランドが好きなんだ?"」。
友人は少し考えてから答えた。
「このブランドが好きかどうかはわからない。でも、この石けんを作つた手が好きなのよ」。
そのシンプルな言葉のなかにはっきりと現われていたのは、実に深い考えであり、今の時代にビジネスをし、ブランドを築き、マーケティングをするとはどのような意味を持つことなのかを考え直させる劇的な変化の源であった。
それから彼女は、その石けんを作っている地元の会社と創業者の話をしてくれた。
「会社のオーナーに会ったことがあるんだけど、すばらしい人たちよ。日的意識を持って製品を作り、私たちのこの町に、責任を持って健全で持続的な事業を築こうとしている。環境に配慮して、自然由来の地元産の材料を使っている。誠実さを基盤にした会社にしたいと考えていて、従業員の待遇もとてもいいって、働いている人たちから直接聞いたわ。それって、とても大事なことでしょう? 地域社会にも積極的に参加していて、地元のメイカームーブメント(訳注:技術の発達によって個人でも物作りができるようになること。生活や社会にもたらされる大きな時流の変化)のイベントにも来るのよ。石けん会社のオーナーはこの町を暮らしやすい場所にしたいと考えている。信頼できる人たちだから、応援しているの。彼らが何を売っているかは、あまり関係ないのよ」
私は彼女に、この石けんの広告を見たことがあるかを尋ねた。
「いいえ。それどころか、そもそも“広告というもの"に興味がないのよね」
もしこの話を1970年のプロクター・アンド・ギャンブル社の広報担当者にしたら、宇宙人扱いされるだろう。
私の若い友人は、広告を重視しないと言っている。そして実際、広告からまったく影響を受けていない。
創業者の理念に賛同し、アイヴォリー石けんの10倍の値段で石けんを買っている。
彼女にとって、それは石けんの値段(price)、製品(product)、流通(placement)、宣伝(promotion)一昔から言われているマーケティングで検討すべき「4つのP」―より意味のあることなのだ。
いったい何が起きているのだろうか?
これはひとつの例に過ぎないが、この本ではさらに多くの事例を紹介し、まさに消費者主導の大転換と言うべき変化が起きていることを指摘したい。
実を言うと、この大転換は100年以上前から始まっていた。私たちが日の前にしているのは第3の、そして(おそらく)最後の消費者の反乱の始まりだ。
だが、この変化を、そしてあなたやあなたのビジネスヘの驚くべき影響を明らかにする前に、まずはここまでの道のりをたどることにしよう。 』
(マーク・W・シェイファー/ヒューマン・マーケティング戦略より抜粋)



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